SL-C860は電子辞書の夢を見るか?


 erieriさまがこちらで『SL-C860は「電子辞書に対抗できる」PDA』というタイトルで新しいZaurusに搭載された自動翻訳機能について語られています。
 仰ることは至極当然だと思いますが、実際にはそのようになるかには懐疑的です。


 最新のZaurusであるSL-C860では、英日、日英翻訳ソフトが搭載され、簡単にWebやメールの英文を翻訳することが出来ます。これは確かにたいしたものだと思います。また、辞書も当然のように搭載され、これも目的の単語をコピーして辞書を呼び出すことで簡単に検索することが出来ます。
 しかし、これらの機能は確かに便利ですが、これをもって、PDAの携帯や電子辞書などとの差別化が可能とするのはちょっと難しいかなと思います。


 先ず第一に、差別化の話をするって言うことはそれはマーケットの話であって、それでどれだけ売上を伸ばすことが出来るのか、市場を拡大することが出来るのかって言うのがその話のメインテーマであろうと思います。とすれば、自動翻訳機能でPDA市場で売上を伸ばしたり市場を広げることが出来るかどうかは、そこにニーズがあるか否かで決定します。
 僕の認識としては、そこにそういった翻訳機能を求めるニーズは存在しないだろうと思います。というのも、自動翻訳ソフトというものはPC用ではかなり前から存在します。しかし、それを一般のユーザーが使っているのかといえば実際のところはほとんど使われていないというのが実際のようです。一般ユーザーが英語のHPを自動翻訳ソフトを通して読んでいるというのもほとんど無いという調査資料をどこかで読んだ記憶もありますし、実際に自分の周りで英語のHPを読んだり、英語でメールのやり取りをしている人と言うのはほとんどいません。もちろん自分で英語の出来る人は別ですよ(^^;


 また本質的な問題として、それをモバイル環境でPDAでやりたいと思う人がどれほどいるのかという問題もあります。ある程度仕事に使うのであれば手軽さよりも精度が重要視されますし、趣味でチョロっとHPを見るだけならほとんどのユーザーが英語のHPというだけで読もうとしないというのが実態だと思います。
 erieriさまは上の記事で

日本人は「英語」を比較的長く学生時代に学ぶ国民ですが、そのわりに「英語」が苦手な国民でもあります。ちょっとしたやりとりが必要なときに、電子辞書で単語をひくだけでなく(もちろんSL-C860にも辞書機能は搭載されています)、さくっと簡単にある程度の翻訳ができること、

と書かれていますが、僕は実態は英語が「苦手」なのではなく英語が「必要ない」んだと思っています。日本はある意味世界でも貴重な英語が出来なくてもちゃんと知的生活の出来る国です。ちょっとした英語のやり取りも必要ないし、英語の情報を取らなくてもたいていは社会生活上問題は無いわけです。必要の無いものは身につかない。これはいつの時代も何に対しても真理です。英語課に在籍中の学生よりも経済学部出身の商社マンのほうがスムースに英語でコミュニケーションをとれるって言うのは、まあ、当然のことな訳です。


 また、話は変わって「携帯」との差別化(これは記事のコメントの中で言われています)に関しても、僕の使っているJ-T010は最初から辞書が内蔵されていて、Webやメール利用中にもマルチタスクで辞書を引くことが出来ます。もちろん翻訳は出来ませんが、電子辞書機能としては結構重宝しています。
 僕がPDAを使っていた理由のうち、結構大きなものがこの「電子辞書の内蔵」であったことは事実です。しかし、これも携帯に内蔵されてしまった今、僕が次のPDAを選ぶときに電子辞書や翻訳ソフトはあまり重要な項目としてはあがらないと思います。ただ、内蔵されていて当たり前とは今でも思っていますが。


 と、ここまで書いて思うのは、結局翻訳ソフトなどを見て「あ、便利そうだな」って思う人は実はもう英語がある程度出来る人がほとんどなのではないか、と言うことです。電子辞書などを使えば普通に英語のHPなども読めてしまって、実際に普段から読んでいる。そういう普段から英語を扱っている人にはちょっとアピールするかもしれません。僕はあの翻訳ソフトの訳の分からない日本語が嫌いなので電子辞書機能の方がいいですけど(^^;
 で、そういう人にPDAの翻訳機能が本当に「購入」にいたらせるまでの魅力を持っているのかといえばかなり懐疑的だと思うわけです。多くの人が辞書でいいと思ってしまうのではないか、というのが僕の感覚です。


 Zaurus自体はとてもいいPDAだと思っていて、個人的に欲しいか欲しくないかと問われればもちろん欲しいです。また、翻訳ソフトもあればそれに越したことは無いかなぁと思っています。しかし、erieriさまの言う「通信以外の機能」が魅力的になることで、その商品性が上がるかといえば、ノーかなぁと思います。
 携帯が売れているのはあくまでも「身近で楽しいコミュニケーション」ツールとしてだし、電子辞書は「必要な機能を安価で」提供しているから売れているんだと思います。PDAは今のところ一般の人から見ればそういうツールではありません。である以上これまで通り「売れないガジェット」でありつづけるだろうと思います。もちろん、僕は好きですけどね>PDA。ただ、あんまりもうスマートフォン以外の方向では期待はしてません(^^;